六月二十九日

　現在六月二十九日、時刻は午前三時である。睡眠障害の薬を飲むようになってからこの時間に活動的でいることはほとんどない。自分は生得的に夜型で、真夜中に一番快活にいられると信じていた時期もあったけど、いざ「順」の生活リズムで過ごしてみると、真夜中は少し危うい感じがする。暗いところに誘惑される感じ。

　ずっとテーマを決めてブログを書くことにしていたけど久々の日記。色々なドラフトはあるけど、時系列にこだわりたいからそれらが書き上がるのを待っているとブログの投稿が滞る。

　躁がひどく、突然脈絡なく人に連絡を取って、相手の外出の邪魔をしたり返信が来なくて落ち込むことを繰り返している。結局はそれらも杞憂で突然連絡してしまった友人とは久しぶりに二人で出かける約束ができたのだが、瞬間的な居た堪れなさはしばらく味わいたくないのでSNSを消した。SNS上でものすごいスピードで繰り返される消費についていけないのもある。お金がないから。

　元々食事という行為が好きではない。食欲の波がひどく、先週までは成人の一食分を一日かけて頑張って食べる生活をしていたのに、今はおそらくPMSが原因で常に食べ物、特に小麦製品を食べており、身体は重いし頭はスッキリしないしで精神衛生に悪い。

　身体に合う頭痛薬を探そうということで神経内科に通って順番に薬を試している。二種試してどちらも副作用がひどくて駄目だったのだが、直近で処方されたものが合っていそうでホッとしている。頭痛があるとき頭が本当に痛いのか自信がないので、全ての頭痛を気のせいだと思い込むことにしている。絶対に関連はないだろうが、運の良いことにここ最近はほとんど頭痛に悩むことがなくて次回受診日までに薬を試せないなと焦っていた。今日のめちゃイタ頭痛のおかげでやっと飲めた。

　マニュアルのある仕事が苦手だ。大手ティースタンドで仕事を始めているが、仕事内容にかなり困難を感じている。ドリンク作成の手順がなかなか覚えられなかったり、何をどの分量だけ入れたか二秒前の行動に自信がない。特にこの後者が致命的である。ドリンクのサイズやお客さんの好みに合わせて5×5ほどのオプションがあるシロップマシーンで甘さを調節するのだが、パネルボタンに番号が書いてあるにもかかわらず違うところを押していて、店長に言われて初めて気づいた。「今どのボタン押した？」って言われて「◯番（正しいパネル）押しました」って言ったら、「違うところ押してたよ、これ履歴ね」ってマシーンのディスプレイを指されて、少し心象悪いだろうなあと思った。きっとミスを隠蔽したと思われてる。わたしとしては履歴が出てくれたほうがありがたいのでこれからもディスプレイをみながらダブルチェックすることになると思う。今までやっていた夜職も塾講師も、そのとき最適な答えが向きあう相手や状況によって違っているから正解などなく、それはまた明確な不正解もないということなのだが、大手チェーンというものは、第一に味やパッケージを含めたすべてのサービスが常に同じクオリティで提供されなければいけない。臨機応変に、ルールから外れて対応することはあってはならない。その価値観に慣れるのに時間がかかりそう。

　一方、マニュアルのない仕事である塾講師。先週一週間がテスト期間で、わたしがもっているのは全員高校受験生なので点数はまあ大事になってくる。わたしまで緊張しながら出勤して、返却されたテストをみせてもらったが、本当に嬉しいことがあった。発達グレーの診断がすでに出ていて算数障害に近い子をこの春から受け持っているのだが、前回テストが五点くらいだったものが三十点も取れていた。本当にすごいと思う。本人は照れなのかクールにしていたが、きっと安心しただろうし達成感があったと思う。今までテストをみせるのをかなり渋っていて、点数は最後までみないこともあったらしいのに、すんなりみせてくれた。ファイルからテストを出してもらったとき、折られた一枚の紙から赤丸がいくつもみえていてわたしも本当に安心したし嬉しかった。たくさん褒めたつもりだけど果たしてうまく伝わっただろうか。わたしは褒めや励ましが下手なのが課題だから。生徒の点数があがらなかったら仕事ができないとみなされることはないだろうけど、それでも結果が残せたのはわたし個人の話として素直に嬉しい。どうすれば良いかたくさん調べて考えたし、単元を取捨選択するなど準備もしていたから。それを生徒が丸ごと吸収してくれて嬉しい。

　泥ノ田犬彦さんの「君と宇宙を歩くために」という漫画連載を読んでボロボロに泣いた。前述の通りマニュアルや正解がある仕事に困難を感じているから小林に感情移入して泣いたし、職場ではずっとメモを握っていて、先輩に「メモ魔？」と聞かれて「すぐ忘れちゃうんです」と答えたばかりだったから宇野の気持ちも痛いほどわかる。

　わたしって変な人なんだろうなと思う。挙動とか価値観とか。自分がODDでもあまり気にせず、むしろのびのびやってきたほうだと思うけど、そういられたのはそれを面白がったり楽しんでくれる周りの友人の懐の広さがあったからだと痛感している。わたしはその変な部分を親しい人間のいないコミュニティで貫くことはできないんだと思う。普遍的で年相応の人間を演じようとするから逆にぎこちなくなる。職場は同世代の大学生しかいないが、大学に入学してバイブス会う人が一人もいないなと絶望したときのことを思い出した。でもその中の誰かもわたしみたいに顔を切り替えているのかも。

　部屋を大改造しようとしているので毎日メジャーを片手に部屋をウロウロして、ピンタレストを開いては大量なインプットをしている。服もそうだけど何かをコーディネートすることが好きだと思う。自分のセンスも好きだし。参考書が徹底的に排除された「お洒落な」部屋に常々イラついているのでしっかりみえるところに「映えない」教科書も置く。それがわたしの今の生業だしアイデンティティだから。